花色の月


桜介が居ない時を狙ったかのように、花乃ちゃんが俺の部屋を訪れたのは、桜介が帰ってきて5日程経った雨上がりの夕べ。


相変わらず縁側で煙草をふかす俺の隣に座って、しばらく中庭を眺めていた。


「知花さまにお願いがあるの」


責任感からか、前の頼りなげな面影はだいぶ薄れて、真っ直ぐ前を向く横顔も年相応に見える。

…ちょっとカップが足りねぇけどな。



「なにをだぁ?改まって」


「桜ちゃんは、ここが落ち着くまで居るって言うの」


「まぁ、そうだろうなぁ?」


「でもね……それじゃいつに成るか分からないし、あたしは桜ちゃんの写真が見たいの」


「で、俺にどうしろって?」


何となく言いたい事は分かるけれど、ここは本人に最後まで言わせた方がいいと思ったから、あえて聞き返した。

真っ直ぐに俺の目を見詰める花乃ちゃんは、やっぱり桜介にそっくりだ。


「桜ちゃんを…引きずってでも連れ出して欲しい。
…取り合えずは、紅茶屋さんにでも」


「花乃ちゃんの負担が一気に増えるぞぉ?」


「分かってる。
でも…桜ちゃんはここでは写真に打ち込めないみたい。そわそわと窓の外を見られていても、こっちもやりにくいもの」


そう言って、3分の1ほど吸った煙草をさらっていった。