花色の月


コンコンッ

軽いノックが聞こえて、桜ちゃんが顔を覗かせた。


「花乃……ごめんね?」



「本当に。押し付けられても困っちゃうよ?」


「…えっと……?」


「桜ちゃんLOVEなおじさんを」


「まぁ、12こ?も年上だもんね~。まぁ、あいつはさておき……ねぇ僕跡取りクビになったんだけど?」


「…そう、良かったね」


おばあ様が、桜ちゃんに話したんだね。
ずしりと責任という重みが両肩に乗ったけれど、決して嫌な重さではない。

窓から見える桜は、今や青々と葉を繁らせている。
儚いなんて、もう言わせない。



「花乃…本気?
辛いからもう辞めるって訳にはいかないんだよ?」


「桜ちゃんが心配するのも分かるけど、一回だけあたしを信じて欲しいの。
まだ、おばあ様どころか明美ちゃんの足元にも及ばないけど、それでもあたし成りたいの月守旅館の女将さんに」


「…そっか。いつの間にかしっかりしちゃって……ちょっと寂しいね」


「ううん、ちっとも変わって無いけど、少しだけ前進出来てるなら……のお陰かな」


那月さんのお陰かな。


「えっ…?」


「ううん、何でもない」


あたしに、もう少し自信が付いたら、もしかすると自分から言ってみるかもしれないけど

今はまだ、心の中で暖めておく。