桜ちゃんの姿を見て、真っ先に駆け寄ると思った知花さまは、少し離れた所に立ったまま腕組みをしている。
ちょっと意外…
そんな知花さまの前に桜ちゃんが立つと、事情を知ってる回りの人は気を使って大人しくなったり、その場を後にしたりした。
「十夢……ごめん…」
「どんだけ待たすつもりだぁ?」
最近少し食べるようになったとはいえ、明らかにやつれた知花さまの頬に、そおっと桜ちゃんが手を添えた。
…まぁ、これはこれでセクシーじゃないかなって、他人事のように思うあたし。
事実他人事なんだけど。
知花さまの髪を耳に掛けて、剥き出しになったピアスに指を這わす桜ちゃんの瞳は、泣き出しそうに揺れている。
こんな桜ちゃんの顔を間近で見たら、抱き締めそうなものだけれど。
まだ知花さまは腕組みしたまま、何を考えているのか分からない表情で桜ちゃんを見下ろしている。
「お前分かってんのかぁ?
ろくに話もしねぇで、勝手に思い込んで居なくなられてみろ」
いつもの甘く響く低音ボイスが、今は更に低くなって怒りを含んでいるように聞こえる。
「…うん」
