花色の月


物思いにふけりそうになった時、直ぐ側の電話が鳴った。


「はい、月も…」


『えっと……花乃…?』


「…桜ちゃん!?」


あたしが桜ちゃんの名を叫んだ途端、板場に戻る途中だったと思われる知花さまに受話器を奪われた。


「桜介…か?」


『十夢っ!ごめん電話詰まってるんだ。今から帰るから…』


あたしにまで聞こえるような大きな声で叫ぶと、桜ちゃんは通話を切ってしまった。


ふ~んだ……あたしが出た時は疑問系な癖に、知花さまが出たら直ぐ分かるんだ。

少し拗ね気味で知花さまの顔を見上げた。



「桜介…だったよなぁ?」


「うん、桜ちゃんだった。あっ…知らせてくる!」



まだ信じられないのか、受話器を見詰めながらぼんやりしている知花さまから受話器を取り上げて戻すと、おばあ様達に知らせようと廊下を走り出す。


「花乃!ニュース…」


明美ちゃんの切羽詰まった顔に驚いてテレビを見ると、今まさに桜ちゃんが乗っていた飛行機のニュースをやっていた。


「今、桜ちゃんから電話あったの!今から帰るって」


「ほんまやな?じゃあ女将さんに知らせて来るから、花乃はテレビ見とき!」


あ、明美ちゃんって足早いんだね…

事情を知っている常連さま達も騒ぎ初めて、結局ゆっくりニュースを見る暇は無かったけど、桜ちゃんが無事ならそれだけで十分だ。