花色の月


太股はたいした事は無くて、赤くなったくらいだった。

でも、手の方は包帯があったとは言えしっかり掛けてしまっていたから、跡が残るかも知れないと難しい顔をされた。



自業自得だ。
あんなに嫉妬に狂ってなければ、いくら利き手じゃなかったとしても、そんなミスはしなかった筈だから。






帰った途端、思いっきり桜ちゃんが知花さまの顔を殴った事に、あたしは驚いて動けなくなってしまった。



「何をしたんだよっ!?
花乃の火傷、跡残るってよ?どう責任取んだよ!」


「ま、待ってっ!知花さまは悪くない
あ、あたしが手を滑らせただけだから……」



だから止めてよ…

無抵抗の知花さまに馬乗りになって、襟首を掴みあげる桜ちゃんを止めようと、必死に腕を引っ張った。



「…花乃ちゃん、良いんだ。
俺が悪かったんだから」



「違う違う!知花さまは悪くない!」




あんな言葉に派手に動揺した、あたしが悪いんだ。

涙が止まらなくて、呼吸が浅くなる。

一気に沢山の事が起こりすぎて、とろいあたしの中では消化が追い付かなくて怖くなる。





だって、こんな荒々しい桜ちゃんなんて見たこと無いんだもん…