花色の月


恥ずかしくて情けなくて一気に顔が火照った。

気が付かれてたって事も、太股だって事もどうしようもなく恥ずかしい。

少しは大人になったと、せめても思われたかったのに、いきなり醜態をさらした自分が惨めで仕方がなかった…




「えっ……あぁ、だから流しに…」



納得したように頷く桜ちゃんの、顔を見ることすら出来やしない。

それを分かった上で服の上から冷やそうと、咄嗟に流しに座らさせられた事に、悔しいけれど流石だと思ってしまった。



「さて、ビチョビチョだけど……取り合えずこのまま病院行こっか」



今度は桜ちゃんに抱えられて、その頃には何事だと覗きに来ていた他のお客さんに、武さんや恵実さんがお騒がせしたことを謝っている。



助手席にはタオルケットが敷いてあって、後ろには着替えが置いてあった。

用意周到な武さんと恵美さんに、頭が下がる一方だ……

丁度、知花さまとすれ違いで出掛けていたおばあ様にも、すぐに知らせが行くことだろう。


帰ってからのお説教を思うと、どこか遠くに逃げたくなって来ちゃった…




「十夢が来るって、知らなかったからビックリしたよ」



飛ばすよ?と言って言葉通りに道を行きながら、桜ちゃんが困ったように笑った。



「…ごめんなさい……
知花さまが…あの人だって知らなかったから……
おばあ様には伝えたんだけど…」



「…そっか」



少し驚いたような顔をすると、後は黙って道を急いだ。



少し離れた所にある診療所まで、ものの数分で着いてしまった桜ちゃんの運転は

……おばあ様が乗っていたら扇子で頭を打たれていたかもしれない……





「どれ、熱湯ぶっかけたって?
今、武さんから連絡もらったぞ」



……流石ですねぇ…



先生の言葉に、武さんのごっつい顔がニヤリと得意気に笑ったような気がした。