部屋に来るように言われて、おばあ様の後を着いていきながら、先程の疑問を口に出した。


「おばあ様…お金使ってなかったの?」


「使ってましたよ」



…はぁ?さっぱり意味が分からない。

おばあ様は部屋に入ると、ポンとあたしの手に先程の包みを乗せた。


そっと中身を覗いて見ると…


「…えっ!」

「えぇ、懐紙です」



中身は当然札束だと思っていたのに、なんとお茶の時に使う懐紙がたっぷり入っているだけだった。



「おばあ様って……役者」


永野さまもすっかり騙されたんだね…
てか、じゃあって向こうが持って帰ったりしたら、どうするつもりだったんだろう…



「女は度胸です。
それに、お前に言われたく無いですよ。桜介は生きてるっていうのに、あんなお芝居したのは誰かしら?」


「おばあ様、知ってたの?」



洗脳されてるおばあ様には言わないで置こうと思った情報を、あっさりおばあ様が口にするから驚いた。



「知花さまに聞きましたよ。

話しは戻りますけどね、借りた物は借りた物です。直ぐには無理でもキチンと返して行きましょうね」


「…はい、でも…なら何でさっきあんな事を……?」


「ああ言わせてしまえば、直ぐに返せとは言われないでしょう?明日、明後日では返せませんからね」


「おばあ様には敵わないですねぇ…」


「年の功ってやつですよ」


……