花色の月


「いやぁ、若返ったような気分だよ!」


それは、ようございました。
こっちは一気に年取ったような気分ですよ。

よく喋るおじさまだこと…

ぐったりと畳に寝転がりたいのを堪えて、にっこりとお見送り。

永野絵里の荷物は後で取りに来るそうだ。



「永野さま、こちらお持ち帰り下さいませ」


おばあ様が渡したのは、落ち着いた色合いの袱紗に包まれた何かだった。


「これはもしや…」


「はい、お嬢様からお預かりしておりましたので」


「使っていなかったとは…
では、迷惑料としてお納め下さると有りがたい」



えぇっ!?
永野絵里のお金で何とかやってたんじゃないの?

なら言いなりになる必要なんて、これっぽっちも無かったじゃない!

心の中でおばあ様に悪態を付いていると、頬がひきつってしまいそうだ。



「私のエゴだったんですな。
私の娘と雪乃さんに似た桜介くんが、並んで居るのを見たかったんですよ」


「申し訳ありません」


「いえいえ、月守さんが謝る事は何もありませんよ!
今度は、ゆっくり妻とお邪魔させて貰います」


黙って自分の足ばかり見ている永野絵里の、余りにも激しい態度の変化に掛ける言葉も見つからない。

それに永野さま、娘の初恋は桜ちゃんだったかも知れないけれど、今は知花さまにも色目を使うような女ですけど?

たぶん今日から知花さまは、安心して寝られる事だろう。
寝ている間に、布団に入り込まれるのを怖がっていたから……