花色の月


永野氏は、ため息を付きながら薄目の頭に手をやった。
ポケットからハンカチを出したいようだが、ちっとも出てこなくて仕方なさそうに額の汗を袖で拭う。




「いやはや、少々甘やかし過ぎましたかな…
年取ってから生まれた娘なものでね」



永野絵里にはお兄さんが二人いる。
跡継ぎには困っていないから、甘やかし尽くしたんだろう。



「少々では無いと思います…」


「ハハハッ!その通りですな!
いやぁ、月守さん大変ご迷惑お掛け致しました。
娘の初恋を叶えてあげたかったものでね」


「お父さま!なんで終わったような事を?
私を桜介さまと結婚させてくれるって言ったじゃない!!」


この期に及んで往生際の悪い声が響いた。



「永野さま、花乃が大変失礼を申しました」


ここに来て、初めておばあ様が口を開く。
…ここに来ても、そちらの味方な訳ね。