花色の月


もう、こちらの手札は全部見せてしまった。
後、どう向こうが動いてくるか…


帳簿等は何も付けず、お金だけ渡されていたと言うのは武さんからの情報。

ただ、味を落とさないようにと札束を渡されていただけらしい。

月守旅館の評判をこれ以上落としたくないと言う、永野絵里ならではの苦肉の策は、なんの証拠としても残っていなかった。


その他の事に回されていたお金も、明美ちゃん曰くただお金を渡されていただけらしい。



…昔から、お小遣い帳も付けられなかったものね。
まぁ、付ける必要性が無かったんだろうけど…





「まさか…うちの娘がそんな馬鹿な事を……」


言いかけたけれど、真っ青になった娘の顔を見て黙ってしまった。

あたしだって、法律なんてよく分からない。
でも……


「絵里、帳簿は付けていたんだよな?」


「えっ…だってあれは面倒で……」


「なら、いくら出したかも分からないと言うのかね?」


「だ、だいたいは覚えてるからそれで十分でしょう!」



どうも頭がクラクラしてきちゃったみたいだね。
…永野絵里が面倒だと、適当にしてくれてて良かった……



「失礼ですが、お客さまが減った原因はご息女さまの力が大きいかと。クレームの9割はご息女さまの事でしたから」


「…いやぁ、申し訳ない。
それにしても強くなりましたな。いつも娘の側で小さくなっていた面影もない」


いきなり、どこを見てそんな事を言うのだろう。
どこも変わっていないのに…



「あなたは、雪乃さんにそっくりですな」


どこがだろう。
あたしはお母さんみたいに優しげでもなければ、美人でもない。