花色の月


「…お父さま」


そう、永野絵里の父親。
永野繁氏が、立っていた。

…いつから居たの?



「万事上手くいっていると言う、お前の言葉を信用した私にも問題がありますな。
申し訳ない」


「上手く行ってますわよ!
これでこの女を追い出せば、月守旅館は私の物ですわ!」


「いや、ならんのだよ。
押し掛け女房か……今のお前にぴったりな言葉だな。しかし、私も知らなかったでは済まされん。本当に申し訳ない事を致しました」



そう言って膝を付くと、両手を付いて深々とお辞儀をした。

なにも心を動かされ無かったけれど…
なんせ、ここに永野絵里を送り込んだのはこの人だし、頭を下げていながらも目は射るようにこちらを見ている。

この人にとっては、土下座すらパフォーマンスでしかない。



…ラスボス登場って所ね………




それで永野絵里の父親は、おもむろに口を開いた。


「しかし…永野の援助は今後いらないと言うのかね?」


やっぱりそう来るよねぇ…


「失礼ですが、こちらから永野さまからの援助とは何の事でしょうか?」


「しらばっくれると言うのかね。
こちらが赤字で仕入れにも影響があると娘が泣き付くから、出してやっていただろう」


「桜介が不在になり、永野さまが押し掛けて来てから、我々は帳簿を見せて貰えなくなりました。

いつも通り仕入れのお金は渡されていましたが、それは月守の所から出ていると思っておりました。

違うのですか?」



「ほぉ、押し売りしたと言いたい訳かい?」


「押し売りは、ご息女さまご本人かと」


大丈夫かな?
かなりオブラートに包まない物言いをしているけど…