花色の月


「あなたには出ていって貰います」


何故か勝ち誇ったように永野絵里が口を開いた。
抗議しようとしてくれた知花さまに、目で黙っていてもらうと、真っ直ぐ永野絵里の目を見詰めた。

あなたの魂胆は分かっている。
あたしに近しい人を集めて、その人達もみんな賛同していると思わせて、あたしにダメージを与えたいんでしょう?

明美ちゃんが呼ばれなかった意味も分かる。
彼女ならクビなんて恐れずに、堂々と抗議するだろうから。


「なによ!その目は!
なにか文句があるなら言ってみなさいよ!」


「失礼ですが、永野さまはなんの権限があって、そのような事を仰ってるんでしょうか?」


「なんの権限!?私は桜介さまの婚約者なのよ?ここの次期女将の権限よ!」


さて、ここからが勝負だ。
あたしのへなちょこのハートが負けないと良いんだけど…


「失礼ですが、調べさせて頂きました。
婚約とは名ばかりの押し掛け女房に、法的な権限は何もありません」


「ふ、ふざけるのも大概にしなさいよ!
誰が押し掛け女房よ!」


「あなたです。
桜介とあなたの間には正式な物は何もありません。まぁ、お見合いをした。それだけでしょうか?」


「なんですって!お前の分際でよくそんな口が聞けたものね?なんで眼鏡を外しているのよ。早くその醜い顔を隠しなさいよ!」


こうやってこの人に叫ばれると、反射的に顔を下げて隠したくなる。

でも、今は目を離しては駄目だ。


「桜介は、あなたが嫌で家出までしてしまいました。それでも結婚出来ると思っていたんですか?」