花色の月


朝、二人で着替えをしていると、思い出したように明美ちゃんが聞いてきた。


「なぁ、昨日どこ行ってたん?」


「…お母さんのお墓参り」


「そっか。
でも、なんも言わんと居なくなったら心配するやん。いってきまーすくらい言ってや?」


「うん、ごめんなさい…」


謝る事は無いと笑う明美ちゃんに、自分の胸の内を明かそうか少し迷った。

でも、まだ何も行動に移せていないのに、口だけで色々言うのも気が引けてしまう。

何となく消化不良のまま、仕事に向かった。





「絵里さんがお呼びです。
女将の部屋にお行き下さい」


前の柔らかな雰囲気は偽物だったのかと、ため息が出るくらい固い表情で恵美さんに声を掛けられる。


「…仕事を済ませてからでは駄目ですか?」


「そちらには人をやります。
直ぐに女将の部屋にお行き下さい」


冷たい瞳の裏に何が有るのか分からない。

仕方ないとため息を付いて背を向けると、着いてくる気配がする。

…あなたも一緒に行くのね。




「…失礼致します」


顔を上げて驚いた。

おばあ様と永野絵里は居ると思っていたけれど、武さんや知花さままで呼ばれていたようだ。

…これは、何かある。
多分、この後……永野絵里が勝負に出る。


舞台は整った。
後は、そこでどれだけあたしが勝負を受けられ、一芝居打てるか……

思っていたよりも早い展開に心臓が家出しそうだ。