花色の月


「おぅ、久しぶり。」


「…久しぶり…………じゃなくって!
これ、どういう事??」


ザアザア流れる水音に対抗して、桜ちゃんの声も大きくなる。



「俺が悪かったんだけどなぁ。
鉄瓶のお湯、自分の手に掛けやがった」


「えぇっ!?花乃、ほんと?」



「…ぁ……ごめんなさい…」




俺が悪かったって言ったのが意外で、慌てる桜ちゃんに対する反応が遅れた。




「あぁ、無理してお茶なんて煎れなくて良かったのに!十夢だし。」


「…おい、俺の扱い酷くねぇかぁ?一応客だぞ?」



じゃれるような二人の掛け合いを聞いてるだけで辛いなんて、口に出すことも出来やしない…

なんでか出たのは涙で、痛みからかと回りを更に慌てさせる事になってしまった。




「武(たけ)さん、悪いけど裏に車回してくれない?ちょっと病院連れてくからさ」



「…ごめんなさい……」



手伝えないばかりか、余計な仕事を増やしてしまう自分がどうしようもなく嫌になる。

泣いても解決しないのに、どうしても止まらない涙が恨めしいくて、せめて泣き顔を見られないようにと、うつ向く事しか出来なかった。





「あぁ、たぶん太股も火傷してるから見てもらって」