花色の月


後ろに居る人に聞こえないくらいの声で、ここを離れてからの事を一つ一つ話した。

やっと帰ってきてからの話しになって、桜ちゃんの事も話す。


「でもね、那月さんが桜ちゃんは生きてるって言ってくれたの。
だからね、信じて待ってみる。

それでね……あたし桜ちゃんから跡継ぎの座を奪ってみようかなって……笑わない?
あたしが月守旅館の女将になんて成れると思う?

…でもね、ある人のおかげで、やってみなけりゃ分からないって思えたの。…だから、頑張ってみる。…挫けたり躓いたりしたら、ここに逃げて来ちゃうかも知れないけど……」


そこまでポツポツと話していた声を少し大きくして先を続けた。


「また来るね?

あんまり待たせるのも悪いから今日はこの辺で」


ジャリっと砂利を踏む音がして、人影が近寄ってきた。


「…気が付いていましたか」

「やっぱりあん時だよなぁ」


「二人とも、かくれんぼは下手ですね」


苦笑いする那月さんと、ぼやく知花さまを見上げると、精一杯誠意を込めてお礼を言った。


「ありがとうございます……心強かったです」


「すみません、後を着けたりして…」

「なっちゃんがさぁ、花乃ちゃんが一人でお墓参りに行ったってソワソワしてるから連れて来ちまった」


知花さま、舌を出しておどけているけれど、顔の下から懐中電灯で照らしてるから………かなりホラーですよ?