花色の月


懐中電灯を片手に裏口から出ると、靴ひもをしっかり結んで足場の悪い細い道を辿る。

お墓が村を見渡せる小高い所にあるのは……田舎の特徴かしら?

二回くらい滑った所で、懐中電灯の明かりが坂の下を照らした。


…過保護な人影が2つ。

あの身長の高い二人が、あの小さな茂みに隠れられたと思っているのだろうか。


それでも、隠れられていると思っているらしい彼らに免じて、背を向けるとまた小道を歩きだした。

やっと辿り着いた時には情けない事に、かなり息が切れていて座り込んでしまった。


…やっぱりお水はペットボトルで持ってきて正解。


月守家と書かれた石の前に立つと、思いの外心が落ち着いている事に気が付いた。

リュックから出した2リットルのペットボトルから水を少しずつ掛けながら丁寧に磨いていく。

でも頻繁に誰かが訪れていたのか、殆ど汚れてはいなかった。


花入れに入っていた花もまだ新しくて、捨てるのは勿体無いからと、枯れた葉だけ取り除いて1つの花入れにまとめる。

そうして空いた方の花入れに、自分が持ってきた花を生けた。




「…お母さん、久しぶり」


お線香ではなく、お母さんが好きだった檸檬香に火を付けながら話し掛けると、なんで早く来なかったんだろうと悔やまれた。