花色の月


また縁側から外に出た那月さんを見送ると、あたしも着替えて出掛けようと踵を返した。

久しぶりにお母さんのお墓に行くんだから、髪くらいとかして可愛めの服を着よう。



鍵をかけ忘れた事を思い出して、もう一度窓の前に行くと、障子越しに人影が見えた。


「那月さん…?」


「忘れ物をしました」


そう言って、何を忘れたんですか、と聞こうとしたあたしをきつく抱き締めた。


「しないって…言ったのに……」


「我慢が足りないのは許して下さい。
こうしないと眠れない気がしたんです」


少し身体を下げて、あたしの耳元で囁く声は何を含んでいるのか分からないけれど、どうしようもなく那月さんを必要だと感じてしまう。

…あたしは、もう自分の気持ちから逃げられない。

諦めたら、少しは心が軽くなった。


抱き締められているだけじゃなくて、抱き締めかえそうと着流しの背中に手を回す。


那月さんが優しく髪を撫でてくれる。

ゆっくりと滑る手が、こんなにも心地よくてもどかしい。







心の中に留めておきます。
言ったら困らせてしまうと思うから…

だから、友達の従妹ってポジションでもいいから、側に居させてください……