花色の月


「だから、月の原の祠に詣っていたんでしょう?」


「那月さんって…」


「別に人の心は読めませんよ?
少しだけ感じる事が出来るだけです」


…それは、那月さんに限らずあたしの脳内は筒抜けだって事でしょうか…


「もっと、花乃の助けになれたらいいんですが…
なんせ私もコミュニケーション力に関しては、人の事をどうこう言える人間では無いので」


困りましたね、と長めの髪をサラリとかき上げた。

それを見てつい羨ましいと思った。
だって、真っ直ぐで黒くて艶々している髪の毛は、ずっとあたしの憧れだったんだもん。

このフワフワの髪は、桜ちゃんとお揃いだっていう以外は、何にも良いところなんてない。

寝癖は酷く付くし、湿気が多い日なんて収拾がつかないからまとめるしか無い。



「花乃、雪乃さんの所へ行ってらっしゃい



あたしの思考は脱線していたけれど、那月さんはそれを見てみぬ振りをして話を戻してくれた。



「……行って…いいのかな…」


「喜びますよ。あなたの事を心配してらっしゃいましたから」


それは、生前の事なのか…
それとも、最近にでも『会った』 のかは分からなかったけれど、那月さんの言葉に背中を押されるようにして立ち上がった。


「今度は、私もご一緒します」


「…那月さん……」


「そんな心細そうな顔をしないで下さい。
また抱き締めてしまいたくなりますから」


…ギュッてして欲しいけど……
でも、毎回それを望むなんてはしたないし、その上今回はすっかり自分の汚い所を見られてしまった。

流石に自分から近寄る勇気はなくて、黙って頷く事しか出来ない。