花色の月


黙っているあたしに、悲しげな瞳のまま那月さんが言葉を紡ぐ。


「まぁ、禁欲生活みたいな環境ですけどね。
女が欲しいだけならば、後腐れのない人のが望ましいです」


言っている意味が分かりますか?と、覗き込むような瞳に絡めとられて動けない。


分かってる…
本当は那月さんがそんな人とは違うって事。
でも、信頼することを恐れてしまうあたしは、あっという間に心の中に入ってきた那月さんの存在が……怖いんだ。


裏切られた後の事ばかり考えるようになったのは、いつからだろう…


あぁ、たぶんあの頃からーーー



『花乃ちゃん!一緒に遊ぼー』

『遊ぼー!何する?』

『えーっとね、缶けり!』

『じゃあ、もっとみんな呼んでこよーよ!』


引っ込み思案なりに、初めて出来た同級生の友達と遊ぶ楽しさを知った、小学生の夏。




『遊ぼ?』

『………』

『どうしたの?なんかあった?』

『………』

『今日はどうする?家にーー』

『うるさいなぁ!もうあんたとは遊ばない。うざいから近寄ってこないで』


友情なんて、いとも簡単に壊れるのだと知った、中学生の春。



その後、永野絵里のグループと行動を共にするようになった彼女は、率先してあたしの嫌がる事をするようになった。

近くに居た分だけ、あたしの弱点を知っていたから、それまでとは比べ物にならないくらい苦しい日々の幕開け……


それまでは永野絵里に嫌がらせをされても、 死にたくはならなかった。



……友達がいたから。