「…からかうのは止めて貰えますか」
「花乃…?」
「それに、あたしを抱いても面白く無いと思いますよ」
失礼言い方をしたかも知れない。
でも、これ以上那月さんがあたしの中で大きくなるのを食い止めたかった。
お願いだから、優しくしないで。
「花乃、何に怒っているんですか?」
「…怒ってません」
天然たらしの那月さんには分からないと思います。
そう心の中で続けると、真剣な瞳から目を背けた。
反らした先にある布団の乱れ具合に、思い出したくもない事が次々と浮かんでくる。
寂しくて心細かったから、優しい言葉を掛けてくれる人に弱かった。
なんとなく向こうが求めているのは身体なのだと分かっていても、それには目を瞑って良いように使われた。
一人になりたく無かったから…
なんの言い訳にもなりはしない。
ただ、この人なら心の穴を埋めてくれるかもと、毎回期待して毎回期待を裏切られた。
那月さんは、そんな女だと分かっているから、こんな風に優しくしてくれるんだろうか…
だとしたら…
「満足は出来ないと思いますけど、どうぞ?」
仕事上がりだったから仲居の着物姿のままだ。
「花乃…何故そんな事を……」
帯をほどこうと手を掛けた所で、苦しそうな那月さんの声に顔を上げた。
これで徹底的に嫌われてしまえばいい。
後で、身体目当てだと分かるよりよっぽど気が楽だ。
「花乃が先程言ってくれた言葉は私の宝物です。
花乃は、私が本当に身体目当てで近付いたと、思っているんですか?」
