花色の月


「信じて…頂けるんですか……?」


「はい」


それ以外あれこれ理由を並べたりする必要はない気がした。

不安げな瞳を見詰めながら少し微笑むと、今の今まで強張っていた那月さんの顔にも柔らかな笑みがこぼれた。



那月さんの握り締めていた手の甲に、そっと自分の手を重ねた。

どちらかと言うと冷たい方のあたしの手が、すっかり那月さんの手と同じ温度になるまで、二人とも一言も話さなかった。


でも、それでも伝わるものはあったんだと思う。

いつもの、ちょっと意地悪な優しい那月さんに戻っていたから。



「花乃……あなたは私を誘惑するのがお上手ですね?」


「ゆ、誘惑なんて……」


「ここで押し倒すのは止しておきます。
十夢の万年床ではムードも何もありませんからね」


どこまで本気で冗談なのか分からない、甘い表情を浮かべて微笑む那月さんは、妖艶という言葉がピッタリだと思う。

そして、重なっていた手をそっと持ち上げると、手のひらにキスをした。


ぞくっと何かが背中を駆け抜けて、カッと顔が熱くなる。

なんとも思っていないような顔をして、何故こんなことをするんだろう。



「こんな所を見られたら、桜介に殴られてしまいますね」


「……」


桜ちゃんの名前が出た途端、胸の奥がツキンと痛んだ。

そう、所詮あたしは『桜介の従妹』でしか無いんだ。