花色の月


「…知花さま……ごめんなさい」


布団の山に、そっと手を添えると震えているのが分かる。


「…桜ちゃん…帰ってくる……よねぇ…?」


聞いているかも分からないけど、飛行機のニュースを見てから初めて涙がこぼれた。

泣いたら、桜ちゃんが帰って来ないような気がして……泣くまいと唇を噛み締めていたのに、電話で話をしたからか溶け出したように止められない。


「……帰ってくるって……ヒック」


信じてないと息すらしたくなくる。

ゆっくりと背を向けていた知花さまがこちらを向いた。



「…泣くなよぉ……」


桜介とおんなじ顔して泣いてくれるなと、囁くような声だけれど久しぶりに聞いた知花さまの声だった。

ゆっくりと起き上がってあたしの頭に大きな手のひらを置いた。

やつれた悲しい瞳の中には、涙でぐしゃぐしゃになった情けないあたしが映っている。



「…こんな状態見られたら…怒られちまうなぁ…」


誰にとは言わなかったけれど、先程の電話の事だと思う。


「ご、ごめんなさ…い……」


その時、閉めきった障子の向こうで窓ガラスが微かな音を立てた。