花色の月


桜ちゃんが明日には帰ってくると連絡があって、知花さまは何だか浮き足だっているし、あたしもつい笑みがこぼれるのを止められない。

そんなあたし達を怪しみながらも、決定的なものは掴めていないらしい永野絵里は、こそこそ嗅ぎ回っているらしい。

でも真相は、あたしと那月さん知花さまと明美ちゃん、あとは武さんしか知らないし、みんな口は固いので何も掴めないみたい。


悲しい事に、お客さまが減ってしまったから、どうしても暇な時間が出来てしまう。



「ちょっと来なさいよ」


「…はい」


従業員部屋に入ると、直ぐに食い付くように聞いてきた。


「隠してる事を全部吐きなさいよ!
なにを企んでる訳?」


「何も…ありません」


パシッ!

顔を叩かれたのは初めてかも…
見えない所をつねる等陰湿な方がこの人の十八番だから。


でも…あたしは負ける訳にはいかない。


「接客業である以上。…こんな顔でも商売道具です」


「だから何だって言うのよっ!
女将にも黙って何をしてるのか吐きなさいっ!」


「…お客さまに聞こえます」


「うるさいっ!聞こえてもかまわないわよっ!」



永野絵里が怒鳴った瞬間……



「花乃っ!桜介がっ!」