花色の月


「良かったーっ!桜介帰ってくるんやな?」


「う、うん……出来るだけ早く帰ってくるって」


やっと明美ちゃんに説明し終わると、明美ちゃんは何故か手をポキポキ鳴らしながら、悪そうに笑った。

…明美ちゃん……?


「帰ってきたら十夢の抱擁の次は、うちの鉄拳や!」


…桜ちゃんの身が危険です!

それでも、そんな事を言いながらも本当に嬉しそうに笑う明美ちゃんに、こっちまで笑顔になってしまう。

電話で声を聞いたというのに、どこか半信半疑だったあたしも、桜ちゃんが帰ってくる事が現実なんだと納得できた。


「あの女ギャフンと言わせてやらな!
帰ってくるまで言わんよね?」


「うん…桜ちゃんもその方が良いだろうって、帰ってきたら自分で追い出すからって……」


「当たり前や!しっかりシメて貰わんとな。花乃が可哀想過ぎるやないの」


「明美ちゃん…」


「うちは仕事出来るからいじめられないしな」


…えぇ、明美ちゃん程仕事出来ませんとも…

ちょっと唇と尖らすと、明美ちゃんが笑いながらつんとつついてくる。


「…あとちょっとやな」


「うん」



早く桜ちゃんに会いたい。

桜ちゃんが帰ってきたら、沢山貰った連絡先に電話して回らないとね。
桜ちゃんが帰ってきたって。

武さんに、お赤飯でも炊いてもらおうかなぁ?




「なぁ、女将さんには……言うん?」