花色の月


「なぁ、なんで花乃ちゃんにかまうんだ?」


憑かれているって人が泣いてすがってきても、私には関係のない話ですとキッパリ扉を閉ざせる、ある意味情に流されないのが如月那月って人だった筈だ。


「…放っておけないんですよ。
十夢、あなたもでしょう?」


「まぁな」


本当は桜介の手がかりが微かにでもある場所を全て回ろうと思っていた。
でも、月守旅館を…花乃ちゃんを見捨てて行けなかった。

…それを、桜介は怒っているんだろうか……

だから、連絡をくれないんだろうか…


「湿っぽいのは止めてくれますか?
なんか、うようよ寄って来ましたから」


『なんか』って何だよ…
てか、うようよって不気味だなぁ、おい。

回りを見回すけれど、俺には何も見えない。
見えなくて良かったけどな。



それに、たぶんなっちゃん流の励ましの仕方だと思うしな、なっちゃんは素直じゃねぇから。
つーか…そうであって欲しい…



「とにかく、桜介が戻ってくるまでの辛抱だなぁ」


「そうですね、十夢にはもう少し頑張って貰わねばいけませんね。あの女もあなたにご執心のようですし」


「えらい迷惑なんだけどなぁ…」


下手すると布団の中にまで入って来そうなあの肉食系にすっかり押されている自分が情けない。

肉食系は俺の専売特許の筈なのになぁ…

まぁ、あいつだけは食いたくねぇけどな。食当たりおこしそうだ…