花色の月


土手の上で待つなっちゃんは、相変わらず美人さんだ。

月明かりの下で見ると尚の事。
…月精ってとこだな。

名前も月が2つも付くしな?



「なっちゃんからお呼びだしなんて、明日は槍でも降るのかぁ?」

「今、降らして差し上げましょうか?」


苦笑いしながらポケットから煙草を取り出すと火を付けた。


「んったく…なんで言わねぇんだよ」


「仕方ないじゃないですか、ただの家出だと思ってたんですから。まさか…」


事態がそんなに深刻だとは……
そう言って吸い始めたばかりの俺の煙草を、ついと取り上げて口にくわえた。

その仕草が色っぽいだなんて、言った瞬間にぶっ殺されるだろうけれど…



「なっちゃん、煙草やめたんじゃなかったかぁ?」


「やめましたよ。でも…今日は煙草でも吸わないと、やってられないじゃないですか」


「アザって…本当か?」



先程の電話でなっちゃんは、花乃ちゃんの体がアザだらけだったと苦しそうに言っていた。


「事実です。かなり陰湿な嫌がらせを受けているみたいですよ。十夢が側に居ると思って安心していた私が馬鹿でした」


「それを言われると立つ瀬がねぇなぁ…」



桜介、花乃ちゃんが惹かれてんのは俺じゃねぇよ。

この人嫌いで偏屈な美貌の窯元だ。