流石に口を付けないわけにはいかなくて、一口二口おさじで口に運んだ。
それでも、なかなか進まないのを誤魔化すように明美ちゃんに話を振る。
「ねぇ、明美ちゃんはなんでここに居るの？
明美ちゃん位の接客のスキルがあったら、どこででも働けそうなのに…」
そう、明美ちゃんは仕事が出来る。
お客さんによって、テンションを使い分けたり、何を望んでいるか細やかな所まで気を使っている。
クレーム処理だって、しこりを残さずにきっちりこなすから、永野絵里だって一目置いていて、あまり明美ちゃんのやることには口を挟まない。
「ん？途中で放り出すのは嫌やしな。
それに桜介にも直接文句言ってやらな気がすまんし」
「……あのさ…明美ちゃんも…」
明美ちゃんも、桜ちゃんが好きなの？
今まで何回聞こうとして最後まで言えずに、飲み込んだだろう。
今も結局言えなくて、飲み込もうとした時。
「あんなぁ、うちには彼氏おるんよ？
それに桜介は好みちゃうわ」
「え…？」
「あれ？これが聞きたかったんちゃうの？」
明美ちゃんは、あたしの頭の中でも覗けるんだろうか…
「頭やなくて、顔やな」
…やっぱり頭の中読んでるじゃん。
