花色の月


おばあ様の部屋に呼ばれてから、3日が過ぎた。

あんな根も葉もない事をおばあ様に吹き込んでおいて、何故まだあたしに仕事をさせ続けるのか目的が分からない。

武さんに怒られる位、食べ物が喉を通らなくなった。

それでも、殆ど水分だけで生きていけるって、人間っていう生き物はけっこう強い。



「こらっ!」


「…ごめんなさい」


怒るのは武さんだけじゃない。
明美ちゃんの怒り方も時には武さん以上に怖いんだ。

いつの間にか、花乃、明美ちゃんって呼び合うようになっていた。
女の子の友達をちゃん付けで呼ぶのが初めてで、なんだかそれだけでこそばゆい。



「まぁた食べへんかったんやって?
そんなんやから貧弱なんや」


…知花さまにしろ、明美ちゃんにしろ、ピンポイントでえぐるなぁ……

明らかにあたしの胸元を見ている明美ちゃんを、恨めしい気持ちを込めてジトッと睨んだ。

そんなふわふわな物は持ってないですよーだ。



「食べても育たないもん…」


「あほっ、食べてみんと分からんやんか!
はい、十夢特製雑炊。食べんとアイツ泣くで?」


知花さまの泣き顔には弱いんですけど…
てか、あたしがごはん食べない位じゃ泣かないと思うけど…


「あの女の追い出し方を考えてんねん。
花乃もいい案あったら言ってな?うちと十夢が実行したる!」


「…おばあ様が…あぁだから無理じゃないかなぁ……」



「てか、桜介のど阿呆な何をやってるんや!
とっとと連絡してこんかぁ!」


本当などこで何をしているのか、さっぱり分からない。
警察だって事件性がなければ捜索なんてしてくれないし、ただの家出としか処理されない。


「てか、十夢のやつすっかりダークなイメージになったなぁ…」


「知花さまにすら連絡ないなんて…」


「てかさ、あの女。
十夢をベッドに誘ったんやって!馬鹿ちゃう?断っても懲りずに小桜の間に行ったりするし」


「知花さまは…」


「アイツがあんな女になびくわけないやんか。
女欲しかったら町でナンパでもした方が、後腐れなくて良いっていってたで?」


…それもどうなんでしょう……
桜ちゃんが悲しむじゃん……