ひとしきり抱き締められたまま泣くと、胸のつかえが少し軽くなった気がした。
「桜介がうちを呼んだんは、花乃ちゃんの為じゃないかなぁって思ってたんよ」
「…あたしの、為?」
「そっ、花乃ちゃんが心配やから十夢も置いてったんちゃうかなぁ」
それは、どうなんだろう…
流石に手紙の中身までは話せなくて、その話しはうやむやに流れてしまったけれど、おばあ様まで取られてしまったあたしにとって、無条件で味方をしてくれる存在はとても嬉しかった。
友達って、あったかいね。
ねぇ、桜ちゃん……桜ちゃんは今どこに居ますか?
一人で、泣いていません…か?
それからは、永野絵里に何をされても前より堪えなくなった。
でも、彼女はそれが余計に気に入らなかったみたい。
「花乃、またミスをして絵里さんを困らせたの?そんなに仕事が出来ないなら、もう出なくて良いですよ。
絵里さんが居てくれれば安心ですし」
あたしが何をしてあの人を困らせたって?
いつも困らされてるのはあたしの方なのに、おばあ様にはもうあたしの言葉は届かない。
ねぇ知ってる?おばあ様。
永野絵里の高飛車な接客のせいで、常連さまが離れていってしまいそうなんだよ?
どうせ、それもあたしが何かしたからって事にされるんだろうけど…
これ以上は、あたしにはどうしようもない。
桜ちゃんが復帰して永野絵里が居なくなったら連絡をくれって、それまでは来ないからって、何人ものお客さまにこっそり携帯の番号を教えられたりした。
あたしは、桜ちゃんが帰ってくるまで、ここを守っていたいと思っていたけれど…
もう……
