花色の月


「ごめんなぁ?うちがもう少し立場上やったら、色々助けられたんやけど…いくらなんでも下っぱ過ぎるからなぁ…」


本当にしょんぼりして言ってくれる明美さんを、信じようと…信じてみたいと思った。


「いえ、今日だって助けてくれたじゃないですか」


「あの程度やけどな…。
あっ、うちに敬語使わんで?」


自嘲するような微笑みを浮かべた後、コロッと表情を変えて言った。


「えっと…いくつ……なの?」


タメ語を頑張ってみました。
でも、いきなりは難しいね…



「それは聞いちゃいかんよ~!なんてね、実は桜介の一個下や」


「なら…年上だし……」


タメ語で良いんだろうか…


「いいって~!だって友達に敬語とかおかしいやろ?」


トモダチ……友達…?


「あれ?うちそんな変な事言ったっけ?」


どうしよう…人前で泣きたくないのに……
嬉しくて、涙腺が緩んでしまう。


「キャーッ、泣かんといて~!桜介に怒られるやん!」


ムギュッと抱き締められて、くしゃくしゃになるくらい頭を撫でられた。

あったかい…
『人肌は安心するから』桜ちゃんの言葉を思い出して、更に涙がこぼれ落ちる。

桜ちゃん、桜ちゃんに会いたいよぉ…



「もう桜介に怒られてもいーや。
泣いちゃえ泣いちゃえ!思いっきり吐き出しちゃえ!」


何を思ったのか、あたしの涙腺を壊すような事を言って、更にムギュッと抱き締めてくれる。

…こんな時なのに、服の上からでも分かるふわふわの質感が羨ましい……あたしのも、もう少し育って欲しいんだけど…