花色の月


…また、嫌われちゃう……


でも、言葉がうまく出てこなくて、苦しくて涙が出る。
泣きたくなんて無いのに、それでも止まらない涙の止め方を誰か教えてください。



「あっ、すみません。
女の子の部屋に勝手に上がってしまいました」


今さらな事を、本当に申し訳なさそうに言う那月さんに、そう言えばどこから入ったのかと疑問の視線を知花さまに向けた。


「あぁ、ごめんなぁ?
俺の所から部外者入れちまった」


あぁ…小桜の間から……
裏口からでも、すぐにあたしの部屋には上がれるけど、知花さまにしたら入りやすいのは小桜の間の縁側なんだろう。


「…すみません」


ご心配お掛けして…

引っ込まない涙を何とかしようと、目元を擦った。


「真っ赤になってしまいますよ。それに謝らなければいけないのは私達の方です」


やんわり手を退けられて、もって行き場のない視線を部屋の中にさ迷わせた。



「ごめんなぁ?」


「こいつは、土足で人の心の中に進入するような人間ですが、悪い奴では無いんですよ」


…那月さん、あんまりフォローになってない気がします。