花色の月


「なぁ、なんで今日は眼鏡してんだぁ?
最近してなく無かったか?」


嫌な所を突いてくるのね。


「…忘れないために」



「そんなの忘れちまえよ。
無い方がよっぽど…」

「いい加減にしてよっ!あなたに何が分かるって言うの!」


頭に血が上る。
冷静にならなければと思うのに、どうしようもなく押さえられない。


「花乃ちゃん…」


「あなたは桜ちゃんの心配だけしてれば?
興味本意で構わないで」


和やかな雰囲気だったのに…
それを壊したのはあたし。

やっぱりあたしは、一人で居なければいけないんだ。




那月さんの顔が見れなかった。

走り出してから、お茶のお礼も言わずに来たことを悔やんでも、引き返す事も出来なくて…



自分の部屋に入るまで、ただ走り続けた。




「…馬鹿みたい」


変われるかもなんて思ったから、罰が当たったんだ。
変われっこないのに…

鏡の中のあたしは、桜ちゃんに似た顔を涙でぐちゃぐちゃにしていた。



桜ちゃん、あたしが悪かったの?
あたしは、知花さまなんていらない。
妹でもいいから、桜ちゃんの側に居られたら…それだけで良かったのに。






あの子の彼氏も、自分で欲しいなんて思わなかった。勝手に向こうから来たのに…


それでも、あたしが悪い……んだよ…ね?