玄関を出た後、俯きながら向かおうとすると見慣れた靴が目に入った。矢野のスニーカー。


ゆっくりと顔を上げると傘を刺して壁に凭れる矢野がいた。



「・・・ごめん。行ってくるね」



矢野の表情はやっぱり固いまま。そんな矢野を見たくなくてポツリと呟き足を進め矢野の横を通り過ぎようとした。



「やっぱり、行かせたくない」



腕を引かれお気に入りの傘がコロコロと転がる。


矢野があたしに刺してた傘を傾けてくれたけれど近すぎる距離にまた離れてしまいたくなる。