「やめてくださいよ、イノシシって! まだ22ですよ、うら若き乙女ですよ!」
「だけどさ、お前、それですっかり有名人じゃないか。細っこいのに、人は見た目じゃ判断できないよな!」
そして彼は、ワハハと笑ってバシバシと私の肩を叩き、私を軽く絶望させた後、すたすたと廊下を行ってしまった。
「はぁ……」
思わず深いため息が漏れる。
「イノシシガールって……はぁ……ガールつければいいってもんじゃないのに……」
エレベーターは使わない主義なので、そのまま人事のあるフロアへと階段をとぼとぼと上る。
体力バカ、イノシシガール……
こんなうら若き乙女にあるまじき、とんでもないあだ名がつけられたのはもちろん理由がある。
けれどそれと私のデイジーレコード入社は、関係ないと思ってたんだけど……アイドルへの熱意が伝わったんだと思っていたんだけど……もしかして違うんだろうか?
