真生は白いシャツに黒のパンツ。ごついブーツ姿だ。
あれだけ暴れたにも関わらず、さらさらの髪は美しく肩を覆っている。
黙ってさえいれば、本当にお姫様みたいにきれいだ。
なのに、喧嘩って……。
「今、弓削兄弟がオーナーのところに行ってるから、僕から説明させてもらうけど、最初に挑発してきたのはあっちなんだよ」
この楽屋には、私、真生、有田さんの三人しかいない。
「あっち? 誰なんですか?」
「対バンのバンド」
有田さんはため息をつきつつ、言葉をつづけた。
「楽屋で煙草吸っててさ、それを真生が『止めてくれ』って言ってね、とりあえずやめてはくれたんだけど、雰囲気が悪くなっちゃって……」
「この狭い楽屋で煙草?」
