バンから降ろしたグッズがぎっしり詰まった段ボールをいったん下に置き、ライブハウスの裏口の階段を駆け足であがる。

ライブハウスはこのビルの二階でキャパシティは200人。うち以外の対バンは3組。今夜ここで、Saw Atを含めて四つのバンドがライブをするらしい。


『helix』に出向になってからこのかた、学生時代と同様、適当なTシャツとボーイズデニムにスニーカーといういでたちに戻ってしまった私。

もともと髪は肩につくほどのセミロングだったので、それもがっちり後ろで一つに結び、なおかつすっぴん。


モテとは程遠いビジュアルだけど、別にもてたいわけでなし。

皮膚呼吸もできるし、顔もじゃぶじゃぶ洗えるし、この点においては毎日メイクしてスーツを着て通勤していた一か月よりもうんと気楽だった。



ステージの上で楽器の配線や設置をしていた有田さんは、私がステージの下に駆け寄ると、手を止め、ステージから降り、申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせる。