小さいけれど、艶のある声でささやいたそいつは、不機嫌そうに唇を尖らせつつ、まるでドラキュラ伯爵が棺桶から目覚めるかのように、スーッと、音もなく体を起こす。
横顔は、まるで一枚の絵画のようだった。
自ら発光するような肌に、さらさらの絹糸のような黒髪が、肌の上を滑り、肩を覆う。
反り返った長いまつ毛は憂いに満ち、唇は薔薇色で……
あんまりにもきれいだから最初は美女かと思った。
だけどそのひとは、その印象的な長い指で額にかかる黒髪をうるさそうにかきあげて。
そのほっそりしたのどに、アダムのりんご(ちょっとロマンティックだけど)まさにそう形容するしかない、のどぼとけを持っていた。
男の子だ……。
彼が、マキ?
マキ……。
