「朝ご飯はたくさんいただきましたが、パンは大好きなのでぜひご一緒させてください! あとできればイノシシちゃんじゃなくて、藍田と呼んでいただければ」
さすがに22歳でイノシシちゃんなんて切なすぎるし。
「あ、そうだね。藍田さん」
私のお願いに、御子柴さんはクスクスと笑いながら、私をドアの中に招き入れてくれた。
どうやら御子柴さんは、かなり気さくな人らしい。
だって、彼ほどの人なら、自分でパン買いに行かなくても、スタッフに行かせればいいのに。超売れっ子なのに、こんなに感じがいいなんて、衝撃だわ……。
デイジーレコード内で、社員を下に見て使い走りにするという、某アーティストの顔を思い出しながら、部屋の中に入る私。
中はいたって普通だった。
部屋の中心にはデスクが六つほどあって、ごちゃごちゃとPCが置いてあって。さらに右手には応接セットが鎮座している。
普通のオフィスって感じ。
