「――あれ、君は」 背後から声がして、振り返ると廊下の奥、エレベーターを下りてこっちに向かってくる人影。 「あ!」 驚きのあまり、失礼にも思わず指をさしていた。 「やっぱり、イノシシガールじゃん」 白っぽい金髪に両耳びっしりのルーズリーフみたいなピアス。 好奇心にきらめく釣り目は【赤と黒の蜘蛛】の主宰である御子柴律だった。 「おはようございます!」 頭を下げた後は、彼のもとへと駆け寄る。 「手伝います」 「え、本当? ありがとう」 彼は両腕に大きな紙袋を抱えていた。