「時代が移り変わって、自分たちで作詞作曲するシンガーが増え、日本ではA&Rの仕事の大半は、音楽ディレクターと同一のものになった。メジャーのように自分の裁量で独断でアーティストと契約なんて結べない」
「そうなんだ……」
ちなみに音楽ディレクターとは、CDを作る際、録音の現場に立ち会う現場監督のようなものだ。
「そしてさらに言えば、A&Rのスカウト機能だけど」
「うん」
「今はほとんど、やってない」
「え!?」
目が点になった。
だってスカウトがスカウトしなくて、どうやってみんなデビューできるわけ!?
「じゃあ、何してるの、A&Rって……」
「デイジーレコードの場合は、月に一度会議があって、アルバイトや契約社員から届く音源やレポートを見て、売れそうだとか売れなさそうだとかあれこれ話して、よっぽどこれはっていうのがなければ、会議は終了」
