「え、ごめん……っていうか、そもそもA&Rってスカウトでしょ? やりがいある仕事だと思ってたから」
「――」
虫けらでも見るような目で私を見下ろす池中は、一瞬難しい顔をしたけれど、ふうっと息を吐き軽く首を傾げ私を見下ろした。
「バカにでもわかるよう教えてあげようか」
「う……」
バカでもわかるって!
でも……知りたかった。
勉強不足なのは私だし……。
こっくりとうなずく私。
「そもそもA&Rっていうのは、その昔、作詞作曲する人間と歌手が分業だったことで生まれた職業だよ」
「へぇ……」
「ビートルズから、自分で作った歌を自分で歌うという流れが当然のようになったけれど、それまでは優れた作詞作曲家と、その世界を表現できる歌手を結びつける存在が必要だった。それがA&R。そしてレコード会社への橋渡しも当然やっていた」
「ふんふん……」
