だけどそういうスカウトは、通常Ａ＆Ｒの仕事。
そしてデイジーレコードのＡ＆Ｒは、経営戦略部同様、花形部署で社内のエリートが集められている。
残念ながら、私のような『なぜ入社できたのかわからない』といわれるような社員は、お呼びでないんだよね。はぁ……。
「池中、Ａ＆Ｒなんてすごいね……羨ましいよ」
池中のこと、あんまり認めるようなことを言いたくなかったけど、やっぱり本音が口をついて出た。
だって、何が悲しくてアイドル好きな私が（いくら【赤と黒の蜘蛛】の御子柴律が立ち上げたレーベルとはいえ）インディーズレーベルに出向しなくちゃいけないんだ。
そういうのが大好きな新入社員は、ほかにいたはずだ。
学生のころからレコードショップでバイトして、人と違う感性じゃないと意味がないと、手書きのＰＯＰ作るのに命かけてた男子とか。
ロキノン系っていうんだろうか……。
流行のアーティスト、メジャーなんてくそくらえだ、みたいな。
そんな人のほうが、私よりずっと向いてると思うのに。
