ちなみに私と一緒に呼ばれた池中はというと――

レコード会社で一番の花形ともいえる、社長室つきの部署A&R(エーアンドアール)部門への配属が、本部長直々に言い渡されていた。


A&Rは『Artist and Repertoire(アーティスト・アンド・レパートリー)』の略で、要するにアーティストの発掘をする人たちのこと。

そして発掘だけじゃなくて、そのアーティストの育成や、楽曲作成、彼らにかけられる予算の制定まで、一手に握る責任者だ。


レコード会社で働くことを夢見る子なら、誰だって妄想するんじゃないだろうか。

自分がスカウトした子が、才能を花開かせ、スターになっていく、そんな場面を。


私も、音楽業界に漠然と憧れを抱くようになってから、百万回はそんなサクセスストーリーを妄想したものだ。


街でかわいい女の子に声をかけて、アイドルグループを作るとか、売れない地下アイドルを見出して、スターダムにのし上がる、とか!
(想像しただけで、ウヒャーとテンションが上がる)