だけど奥田さんが言った、私のインディーズレーベル出向は――

人事部長どころか経営戦略本部長の耳にまで入っているということは、どうやったってもう決定事項ということだ。

そして不満があったところで、私が人事の決めたことに『いやです』といえるはずもない。



「よろしく頼んだよ、藍田君。そして池中君」



そして、すべてがうまくいくといわんばかりに上機嫌な経営戦略本部長にがっしりと握手をされて、

「が、頑張ります!」

と手を握りかえしてしまった自分に、軽く自己嫌悪に陥っていた。



結局私は試用期間終了を待たずして、来月五月のGW明けから、御子柴律が立ち上げたというインディーズレーベルに出向ということになっていた。


嘘でしょ……。



「――失礼します」



信じられない気持ちのまま頭を下げ、私と池中は応接間を出た後、なんとなくお互い無言で廊下を歩いていた。