別にいいんだけどね。




「それ、花だね」

さわかは僕が持ってるガーベラを見て言った。
「そう、ガーベラ。」

「すみれかと思った。」
「はは、全然違うけどね。」


さわかがふっと笑って
「忘れちゃった」
と呟いた。窓から風が入り込んで薄緑のカーテンが揺れる。


「・・・・そっか」
それは忘れたんじゃなくて
いまだけ忘れてるんだよ、とは

言えないけど。



「綺麗だと思う?」
「うん。カワイイし。」

「欲しい?」


「くれるの。」
「もちろん。そのために持ってきたしね。」

「ありがとう!」


手をぱっと広げ喜ぶさわかに、こっちも顔がゆるむ。可愛いなあ、さわか。


薄く微笑んでみていると、さわかも少し微笑んだ。


はい、とガーベラを手渡し。

さわかはガーベラを受け取ると、要件をメモするメモ用紙とペンを取り出した。
可愛い猫の柄のメモ用紙。


「ん?何するの?」

訊くと、さわかはペンのキャップを取りながら、それは良い笑顔で答えた。

「男の子からだよって書いておくの!」


「・・・なるほど」
「忘れると嫌だから。男の子も嫌でしょ?」



言いながらペンを紙に滑らせ、紙には
『ガーベラ。男の子から』
と書かれた。



「見て男の子。これで完璧だね!」

はは、と僕は笑って、一言いう。
これから何度と言うことになるであろう、


一言を。


「・・・男の子じゃなくて、宮沢ユウヤね」