彼女に会いに行くと、彼女は喜んでくれる。
花を持って行くと彼女は喜んでくれる。
さて彼女が、
僕が彼女を愛していることを
知っているのかと言われたら。そりゃあ。返事は
「どうでもいいけど」
なんだけど。
彼女の笑顔は、
ぱっ!
って感じでもなくて。
ふふ、って
感じでもない。
何か、
『笑ってもいいのかな』
っていう感じのする、曖昧な笑み。
僕はそれが好きだった。
一度だけ、彼女のはじけるような笑顔を見たことがあるけど。
背筋が凍って、手は震えて、動機は高鳴った。
呼吸は不自由になり、フラッシュバックした。
粘着質な、記憶が。
だから僕は、戸惑いがちな彼女の笑顔が好きだ。
明るい笑顔なんて求めてないんだ。
彼女が好きだ。
彼女の弱々しい笑顔が好きだ。
優しくしたいと思う。
愛なんて、伝えたくない。
好きだなんて言いたくない。
ただそっと、
この手の中に彼女がいてくれればいい。
きっと前の僕・・・いいや。
前の『俺』には、
それができなかったんだろうから。
