『ばいばい』 黒ぶちの眼鏡を僕の手にそっともどし、山田さんは言った。 ドアが閉まる。 山田さんはくるりと後ろを向いて、母親の待っている席へと行ってしまった。 鉄のかたまりが動きだす。 手を引けばよかった。 山田さんの細い腕をひいて、抱き寄せれば…───