『やめてっ…』



そんな弱々しい、か細い声が聞こえた。



何だ?



聞き覚えがあった。



冬嘉の声……?


何だか声の調子や言葉から、ヤバい状況だという事が分かった。



冬嘉…なのか?




俺が怪我した足をうまくかばいながら、一気に階段を上り廊下に出ると…









3人の男がいた。






その3人は、俺が嫌いな奴ら。


チャラチャラしている、ギャル男みたいな奴ら。




確か、冬嘉の学年にいる真由子?とかいう奴が好きだとか……





俺も3人が嫌いで、3人も俺が嫌いだった。




…………え?



一瞬目を疑った。




その3人に囲まれ、苦しそうになっているのが…






冬嘉だったから。






俺は状況が飲み込めなくて、一瞬立ち止まっていた。




冬嘉の目は赤く、潤んでいた……。







俺はぐっと握り拳をつくって、3人の元へ向かった。


爪が皮膚に食い込んで痛いほどに強く握って。






『何してんだよ』





3人の顔に驚きの表情が現れた。



冬嘉も目を丸くして俺を見ている。







「……蓮…っ…?」









そうぽつりと呟いた冬嘉の声は、震えていて。



その声が、゛恐怖゛を物語っていた。




゛蓮゛



その震えた冬嘉の声が俺の頭の中で響いた。






俺は男達に詰め寄り、睨み付けた。


ふざけんな
ふざけんな

冬嘉に触るんじゃねぇ



俺は怒りがおさまらなかった。




そして、男達は消えていった。





『…れ…ん…ッ』




冬嘉の目からぼろぼろとこぼれる大粒の涙。


それが冬嘉の頬を伝い、床に水玉模様を作っていく。