これを言うから震えてたの?
いつもと違かったの?
「……先輩…あのっ…」
あたしはやっと金縛り状態が解けた。
でも、まだ心臓はドキドキしている。
「………あたし…は…」
心に、
あたしの心に入って出て行かないあの人が。
あの人が………
あたしには必要なの。
あたしには………
あの人がいなきゃ……
「………ごめんなさっ」
言葉が遮られた。
あたしの目の前は真っ暗だった。
先輩に抱きしめられている。
あたしは思考回路がごちゃごちゃになっていた。
先輩の胸板に押し付けられ、前が見えない。
強い力で抱きしめられていて、離れられない。
「……せんぱ……い」
口がうまく開けない。
『……ごめん……
諦めるなんて無理なんだよ…』
「…離し…て下さい…」
『……だろ…』
「……っえ?」
『無理だって言ってんだろ!?』
…………先輩……
「……あたし…だって」
『…え?』
「……あたし…だって、蓮をあきらめるなんて…
無理!!」
……………
『……アイツじゃなきゃ…駄目なのかよ……』
「…ごめん…なさい…」
『アイツじゃなきゃ…』
そう言って、先輩の声は消えていった。
微かに震える、先輩。
あたしはそっと力が弱まった先輩から離れた。
「……あたしは…
蓮が好きなんです……」
あたしは、走って資料室を後にした。


