…怖かった。
凄く怖かった。
あの時みたいに、頭に浮かんだのは蓮だった。
けど、来る訳無いって思ったんだ。
蓮は、きっと接客で忙しいだろうと思ったから…。
それが悲しくて。
悲しくなる自分が虚しくて。
虚しくなる自分に怒って。
仕方無いじゃない、接客しなきゃいけないんだから。
勝手に嫉妬するあたしがいけないんだ…。
『海宝…何か悩んでる?』
突然先輩に言われた言葉に、あたしはびっくりした。
…へ?
何で…分かるの?
「悩んでません…」
気付いてくれた事に、驚いて嬉しくて。
けど、あたしは強がって本音は言わなかった。
『スッキリするよ?
無理にとは言わないけど、言えるなら言えよ。』
何で……
あたし、嘘ついたのに…
どうして先輩は…あたしの気持ちが分かるの?
『悩んでなんか…いませんっ…』
女の子に囲まれて、接客する蓮。
それを悲しいと思うあたしがいけないんだ。
゛他の女の子にそんな事しないで゛
そんな事言ったら蓮を困らせるだけだよ…
先輩は、そんな事をめまぐるしく考えるあたしをじっと見ていた。
まるで心が見透かされているようで、あたしは先輩と目を合わせる事が出来なかった。


